キラリと光る茶箱の宝石 中身の金平糖が鮮やかに見えるギヤマンの振出の蓋と網袋と箱


作品紹介

作品名
キラリと光る茶箱の宝石 中身の金平糖が鮮やかに見えるギヤマンの振出の蓋と網袋と箱
材質
パープルハート コルク 朴
使用した道具
ドリルスタンド トリマーテーブル トリマー
作品コメント
 振出という茶道具があります。茶箱道具の一つで、中に金平糖などの小粒の菓子が入って居て、振り出すように取り出すことからその名が付いたとされています。陶器などの焼き物が多く、トウモロコシの皮を使った菅蓋という栓で蓋をするというのが最も多いパターンです。小さいモノですが、茶箱点前では、客へ渡して主客総礼と点前の起点となる重要な役割の道具です。これを包む仕覆は絹糸で編み込んだ網袋を使う事が多いです。茶巾筒にも網袋が使われる事が多く、これは中に湿った茶巾があるため湿気が籠らないように使うという説もありますが、振出に網袋という具体的な理由が見当たりません。しかし、振出がガラス製の場合、中身の色鮮やかな金平糖がガラスと網袋を通して見える風景では、振出には網袋に限ると見入ってしまいます。
 ガラス製の振出をギヤマンの振出と言う事がありますが、ギヤマンとは本来は江戸時代からのカットグラスの事だそうで、後に硝子道具全般をギヤマンと称するようになったとの説です。以前からギヤマンの振出を探してきましたが、ある時、隅田区のガラス工房の倉庫に眠っていた、ギヤマンの振出が出てきたと聞きつけました。吹き技法とカット細工で作られた振出は美しく、更にガラス製のキャップが付いていました。菅蓋は機能も美しさもあるのですが、やはり最適なのは同じガラス製でしょう。組もうと思っていた茶箱に対して少し大振りですが、まずは入手しました。それから暫くして、今度は小振りの振出形状の瓶が出てきたとの情報です。今度のは型注入技法で色ガラスや彫模様も含む元々は胡椒瓶だったそうで、ねじ山が付いていますが蓋がありません。更に以前入手の大振り振出の蓋無し版も出てきました。千載一遇のチャンスですから、早速入手しました。
 先ずは、蓋の工作です。元胡椒瓶のねじ山の規格は不明ですが、手持ちの木のネジキット(ボルト25.4ミリ)で合いそうな雰囲気だったので蓋を試作してみました。ピッタリの物とはならず、またメスねじ切り加工時に割れない様にすると蓋というより大きな木の塊になりました。木製ナットはどうやって作るのか色々調べましたが手に負えず、これはプロに頼もうと石川県の木地屋さんに瓶を送って、試作の上で作って貰いました。欅製の可愛い蓋で、当方で拭き漆仕上げです。蓋無しの大振り振出のキャップは、『追善茶会用茶杓』の銘木端材等と同時期に入手したパープルハート30ミリ角材からドリルスタンド旋盤を使って、以前入手のガラスキャップを倣って製作です。ブレが出やすい工作機械で硬い木なのでまず円柱にするのに手こずり、小さなキャップに削り出すのも一苦労でした。つくづく本物の旋盤が欲しくなりました。仕上げにガラス系塗装をしてキャップの完成です。
 次に網袋製作です。これに必要なのがピッタリの径の製作柱で、小振り(外径48mm)、大振り(外径60mm)にそれぞれ合うように、コルクシートや塩ビマットを使って既存木柱の太さを改修して準備です。網袋に入れて出来上がった振出は、小振りを『瓢箪茶箱』に、大振りを『遊山箱』『旅箪笥』に組み合わせました。網袋製作は、集中力と根気との勝負ですが、最近では10袋(大振出用3、小振出用6、茶入れ用1)を編んで些か疲れました。
 そして、菓子入れ単体としても贈呈にも使う事になり、小振り、大振り各々に合うように外箱を作成することになりました。茶道具の箱の代表木材は桐ですが、当方の工作技量と入手易さから朴の5ミリ板材を使う事にしました。組み方は接合強さと木口が見えない整然さから、留組を接合全箇所に行う事にしました。このため90度V溝ビットを駆使し、また直線部も鋸切断より直線性を得やすいことから、トリマー工作のみで切削工作です。箱蓋も茶道具でよく使われる紐付きのインロウ蓋や桟蓋ではなくスライド式(倹飩蓋の水平使い)にして、外包みを併用することで、いかにも茶道具という姿にはしませんでした。この箱工作は『自作トリマーテーブル』を駆使して、同時期に作っていた茶入れ用箱と併せて11箱製作しました。仕上げは蜜蝋塗りで、小風呂敷で包んで完成です。

追善茶会のために、白竹、黒柿、ゼブラウッド、紫檀、パープルハートの茶杓を削る
瓢箪(ひょうたん)形の茶箱 トリマル君と超長尺ビットのトリマーで刳り抜き
遊山箱 湯沸かし道具や菓子を組んだ提げ茶箱 トリマル君で茶入れ、密閉タンク内臓の水指 どこでも野点
どこでも野点、旅箪笥に全茶道具を一式 提げ茶箱の第2弾 携行用の風炉、超小型コンロとタンク付き水指
道具3題 ①Tスロットトラック+ドッグホール付きトリマーテーブル ➁電動ドライバー鉛直ドリル治具 ➂円錐台切削用サークルカット治具

 

作者紹介

作者名(ニックネーム)
sarusuberi
年齢
60代
木工歴
6~11年
お住まい
東京都
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